御公現後第2主日(2012年1月13日)
御公現後第2主日(緑、2級)
1962年のミサ典書では、御公現の後、七旬節までの年間主日を「御公現後の主日」と呼んでいます。
今年、2012年1月15日に挙げられる御ミサは御公現後第2主日の御ミサです。
二つの大きな祝日、御降誕祭と御公現の祝日の後、典礼書にはいわゆる「御公現後の」主日が6回あり、これが御降誕を中心とする祝日と四旬節の橋渡しとなっています。
司祭は緑色の祭服を身につけます。
この御公現後の第2日曜はしかしまだ、年頭の大きな祝日(=御公現祭)の余韻をとどめています。
というのも教会は、福音朗読で読まれるカナの婚礼における、私たちの主の最初の奇跡によって今一度、世界に対する主の「御公現」に光を当てているからです。
WEB-site、Introiboではドン・ゲランジェ、ドン・バロン、ドン・シュステルなどの興味深い解説を読むことが出来ます。
当協会の放送の詳細な番組表は、協会と提携しているラジオ・クルトワジ(訳注:パリのラジオ局)の公式サイトではありませんが、Le Blog de Radio-Courtoisieのサイトで見ることができます。
3回の放送の内の一回目は金曜の23時からで、その番組表で各グレゴリオ聖歌のタイトルと、音源に関する情報と、トラック番号を知ることができます。
この放送の録音は、このページでも主日に先立つ月曜日から、この下のカーソルの左の三角をクリックすれば聴けます。
これを聴いて主日の御ミサの準備をいたしましょう。
典礼の面からも、霊的にも、それに・・・発声練習の面からも!では放送をお聞き下さい。
Sit laus plena, sit sonora. 私たちの賛歌が声を限りに響きわたりますように。
(御聖体の祝日のLauda Sion salvatoremより)
入祭唱:Omnia terra
今週の日曜の御ミサのすべての固有唱は、そういうわけでまだ私たちの救い主の神々しさと王たる権威を称える礼拝、賛美、喜びを表現しています。
その救い主を私たちはまだ、飼葉桶の中の幼な子のお姿の中に観想していますが、同時に贖い主としての使命の中に辿りもするのです。
入祭唱は詩編65(訳注:フランシスコ会訳版によれば66)のJubilate Deoを下敷きにしていて、これはとりわけ贖いの前兆であるエジプトと紅海からの解放と、神様がしてくださったすべての善き業へのイスラエルの民の感謝を表す賛歌です。
ベトレヘムの羊飼いや東方の三博士に続いて、幼な子の前にひれ伏し、この方こそが救い主だと宣言するよう促されているのは全地、つまり地上のすべての住人です。
Omnis terra adoret te, Deus, et psallat tibi: psalmum dicat nomini tuo, Altissime.
全地が神よ、あなたを拝み、ほめ歌い、御名をたたえて歌いますように、いと高きお方。
この歌詞をみれば、熱意のこもった勝利に満ちた旋律を期待されるかもしれません。
そういう旋律はこのあとの、同じ詩編を下敷きにした奉献唱に見出せます。
一方、この入祭唱の旋律は確かに厳かではありますが、何か瞑想的な性格を伴った穏やかで、抑制の利いたもので、真の意味での礼拝と言えるでしょう。
この入祭唱は、このあとの奉献唱にある詩編65(訳注:66)の第一節と呼応しています。
Jubilate Deo omnis terra, psalmum dicite nomini ejus: date gloriam ejus.
全地よ、神に歓呼せよ。御名の栄光をほめ歌い、栄えある賛美を捧げよ。
昇階唱: Misit Dominus
御公現後第二主日の昇階唱は詩編106(訳注:フランシスコ会訳版では107)を下敷きにしています。
これは大作の詩編のひとつで「主に感謝せよ、主は恵み深く、その慈しみは永遠。」から始まる詩編です。
この詩編はいくつものエピソードを通して人々が不忠実によって身に招いた不幸を語り、やがてどのようにして人々が主に向かい、主がその慈しみによってどのように人々を救われたかを語っています。
ここに見出す詩句は深刻な伝染病の治癒についてのもので、この詩句には、反復句(リフレイン)として個々のエピソードの後に繰り返される感謝の喜びの句が続きます。
Misit Dominus verbum suum, et sanavit eos: et eripuit eos de interitu eorum. Confiteantur Domino misericordiae ejus: et mirabilia ejus filiis hominum.
主は御言葉を遣わして彼らを癒し、彼らを死から救われた。主の慈しみとイスラエルの子らへの不思議な業を声高に告げよ。
旧約聖書のイスラエルの民は、自分たちが称える主のこの全能で強力な御言葉が一人の人間、「御言葉」、神の子、聖なる三位一体の第2のペルソナ、私たちの贖い主であることをまだ知りませんでした。
私たちを救うために地上にやって来られ、今日、私たちが幼な子の姿のもとに拝むのはまさにそのお方なのです。
この昇階唱では、御降誕祭と御公現祭に聞き慣れた旋律とよく似た旋律が見出せます。
しかし、とりわけ印象深いのは後半の “confiteantur” と”misericordiae” という歌詞の部分の長いヴォカリーズ(訳注:母音を旋律に乗せて引き延ばして歌うこと)で、ここで繰り返されるモチーフによって歌詞が際だって強調されています。
アレルヤ:Laudate Deum
御公現後第2主日の固有唱の最初の2つは、全地とそこに住む全人類に主への賛美を促していました。
それに続くアレルヤ唱では、今度は賛美を促されているのは天使と天の軍勢たちです。
Laudate Deum omnes Angeli ejus, Laudate eum omnes virtutes ejus.
神のすべての天使よ、神を称えよ。称えよ、神のすべての軍勢よ。
これは詩編全体の終わりに近い148の冒頭ですが、ここでは被造物のすべて、天の最も高貴なものから地上の最も取るに足りないものまでを見渡し、創造主であり救い主であるお方を賛美するよう促しています。
ここでもまた旋律はいくつものアレルヤ唱に見られる典型的なもので、待降節の第3日曜にすでに耳にした旋律でもあります。
穏やかで瞑想的で清らかな魂に語りかけるのにふさわしいかすかな喜びに満ちた旋律です。
奉献唱:Jubilate Deo
御公現後第2主日の奉献唱には、入祭唱と同じ詩編65のJubilate Deoが使われています。
今回は弾けるような勝利の喜びで、他の奉献唱にありがちな、内的な観想的な瞑想ではありません。
ちなみにこの曲はそのスケールからしても、堂々たる雰囲気からしても、普段のレパートリーの限界を超えています。
つまり、もはや秘めておけなくなった熱狂、とでも言えるでしょう。
最初の部分には詩編の次の句が再び使われています。
Jubilate Deo, universa terra: psalmum dicite nomini ejus.
全地よ、神に歓呼せよ。神の御名をほめ歌え。
最初の句が2度繰り返され、2度目の部分にはかなり低音のハ音から高音のヘ音まで、果てしないクレッシェンドで上昇する異例のヴォカリーズが含まれています。
後半部分はこの詩編の終わりの部分の詩句に戻りますが、この部分はより内輪の、より個人的な性格を帯びています。
Venite et audite, et narrabo vobis, omnes qui timetis Deum, quanta fecit Dominus animae meae.
いざ聞け、すべて神を畏れる者よ、神が私の魂に何を行われたかを語ろう。
旋律は相変わらず熱狂のうちに始まりますが、やがて”narrabo”という言葉以降、徐々に静まり和らぎ、より穏やかでくつろいだ雰囲気のうちに終わります。
拝領唱:Dicit Dominus
御公現後第2主日の拝領唱はこの日の福音書を下敷きにしています。
思い出してみましょう、カナの婚礼での奇跡は「御公現」を構成する、私たちの主の神性の現れの3つめのものです。
歌詞は福音書のこの部分の要約です。
Dicit Dominus: implete hydrias aqua et ferte architriclino. Cum gustasset architriclinus aquam vinum factam, dicit sponso: Servasti vinum bonum usque adhuc. Hoc signum fecit Jesus primum coram discipulis suis.
主は仰せになった。「水瓶に水を一杯入れ、宴会の世話係のところに持って行きなさい。」宴会の世話係が葡萄酒に変わった水を味わった時、花婿に言った。「あなたは良い葡萄酒を今まで取っておいたのですね。」これがイエズスが弟子たちの前で行われた最初の奇跡だった。
旋律は対照の際立つ小さな絵のようで、このそれぞれのエピソードを巧みに表現しています。
冒頭の主の御言葉は重々しく威厳に満ちています。
やがて宴会の世話係の驚きが歪みを持った旋律で表現され、最後に”servasti vinum bonum”という部分で弾けます。
最後の部分、この物語の教訓とも言える部分は単純で飾り気のない旋律で表現されていて、ほとんど一音節一音対応であり、いささか唐突な終わり方をしています。
当解説はUna Voce France の WEB SITE の記事の翻訳です。
聖歌&解説の音声を聞くには、こちらをクリックしてください。
フランス語の内容はこの記事の内容とほぼ同じです。
フランス語HPの絵の説明 (上から)
写本「ベリー公の大いなる時祷書」1409 年
マルティン・デフース、「カナの婚礼」1597 年 アントワープ大聖堂蔵
(訳注:3 番目の絵には出典がありません)
アミアン大聖堂の歌隊席の木彫、「カナの婚礼」
ヴェロネーゼ、「カナの婚礼」、ルーブル美術館蔵(部分)