はじめに
ミサはカトリック教会の中心にある礼拝です。現代のカトリック教会の方向性を決めた第二バチカン公会議(1962〜1965年)は典礼を「教会活動の頂点であり源泉」と述べました(『典礼憲章』10)。伝統ミサはローマ典礼の長い歴史の中で受け継がれてきた祈りの形式です。1969年に現在のミサが始まるまで、日本を含む全世界のカトリック教会では伝統ミサが捧げられていました。
ミサとは何か
ミサはキリストの十字架のいけにえが秘跡的に現存する祭儀であり、同時に主の晩餐にあずかる聖なる会食です(『典礼憲章』47)。
現代のカテキズムも、ミサを「いけにえであり、主の晩餐の聖なる会食である」と教えています(『カトリック教会のカテキズム』1366、1382参照)。
犠牲と食卓は対立ではなく、一つの神秘の二つの側面であり、伝統ミサにおいてもこの二つの側面が見出せます。
伝統ミサの構造と流れ
ミサは大きく二部から成ります。
前半(賛美とみ言葉の部)
祭壇の前での祈りに始まり、罪のゆるしを願い、聖書朗読と福音を通して神のみ言葉を聴きます。沈黙と跪きが織り込まれ、神の前に立つ姿勢を整えます。
後半(聖体の部)
パンとぶどう酒がささげられ、司祭は奉献と感謝の祈りを唱えます。聖変化において、それらはキリストの御体と御血となります(カテキズム1376)。鐘が鳴り、信徒は跪いて礼拝します。その後、主の祈りと準備の祈りを経て聖体拝領へと進みます。全体は礼拝と感謝に貫かれています。
伝統ミサでの司祭と参列者
伝統ミサでは司祭も全員が同じ方向を向いて神を礼拝します。司祭はキリストの代わりにミサを司式し、参列者は神に感謝と賛美を捧げて参加します。
また伝統ミサではグレゴリオ聖歌を歌います。歌詞は主に聖書の章句が使用されています。参列者は聖歌隊が歌う聖歌を聴きながら黙想をしますが、歌うこともできます。また参列者を代表して侍者(司祭の手伝いをする奉仕者)がミサ中の受け答えをしますが、「Amen(そうなれかし)」など大声で唱える時、参列者も唱えることができます
なぜ立ち、座り、跪くのか
身体の姿勢は信仰の表現です。立つことは復活の民としての姿、座ることは傾聴、跪くことは礼拝とへりくだりを示します。カテキズムは、目に見えるしるしが信仰を養うと教えます(1146参照)。伝統ミサでは、特に礼拝の姿勢としての跪きが重んじられています。
聖体とは何か
聖体はパンとブドウ酒の外観のもとにイエス・キリストの御体と御血が現存する秘蹟です。公会議は「とりわけ聖体の形態のもとに現存する」と明言し(『典礼憲章』7)、カテキズムは「全実体変化」によってパンとぶどう酒がキリストのからだと血に変わると教えます(1376)。
聖体はカトリック信者にのみ与えられますが、伝統ミサでは跪いて口で受けることが典礼規定で定められています。そこには、聖体への信仰と深い礼拝の精神が込められています。
初めて参加する方へ
細かな所作をすべて理解する必要はありません。式文を追うことよりも、祈りの流れの中で神に心を向けてください。沈黙を大切にし、周囲への配慮を忘れなければ十分です。礼拝は、外的な動作以上に、内面的な参与から始まります(『典礼憲章』14)。
終わりに
伝統ミサは特定の立場の主張ではなく、教会が守り伝えてきた礼拝の一つのかたちです。静かな祈りの中で、教会の信仰の中心であるキリストの神秘に触れる機会となれば幸いです。